「アイデアを出せない人は、自分に知識があることを自負しやすいタイプの人である」。医学博士の加藤俊徳氏は、雑誌『ブレーン』のインタビューで、優等生タイプが陥りやすい「思考の罠」について次のように述べています。
昔から熱心に勉強し知識を詰め込んできた優等生タイプの人は、脳の中で「知識を溜める」ための道路(思考ルート)が発達しています。だから「アイデアを出せ」と言われると、自分の知っている中から言葉を組み合わせて出そうとしてしまう。……本当にいいアイデアが出るのは、脳全体を総動員して考えているときです。
出典:『ブレーン』加藤俊徳氏インタビュー(宣伝会議)
新しい発想が問われる時代と言われながら、なぜ私たちは今なお暗記中心の勉強を強いられているのでしょうか。学習指導に携わる私自身も、生徒から「なぜ必要のないものを覚えるの?」と問われ、答えに窮することがあります。
暗記教育の隠れた価値「理性のコントロール」
しかし、暗記教育に全く価値がないわけではありません。以前の記事「偏差値教育の相対化」でも触れたように、一つの側面として「理性をコントロールする力を養う」という意義はあるはずです。やりたくないことにも向き合い、継続する忍耐力は、社会を生き抜く一つの基盤になります。
知識は「アイデアの材料」である
また、名著『アイデアのつくり方』でジェームス W.ヤングが述べている通り、アイデアの本質は「組み合わせ」にあります。
アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない。
出典:『アイデアのつくり方』 著:ジェームス W.ヤング
この視点で見れば、暗記した知識は、将来新しいアイデアを生み出すための「材料」となります。材料が多ければ多いほど、組み合わせのパターンは無限に広がるため、知識を蓄えること自体には大きな価値があるのです。
足りないのは「守」から「破・離」へ向かう訓練
今の教育の最大の課題は、蓄えた材料をどう使うかという「アウトプットの訓練」が圧倒的に不足していることです。武道の「守・破・離」に例えるなら、型を覚える「守」の段階が長すぎて、型を破り、型から離れていくステップへの導きがほとんどありません。
「守(インプット)」で得た知識を、「破・離(アウトプット)」へと繋げていく。この訓練を若いうちから取り入れることこそが、これからの時代を生きる子供たちにとって最も必要な学びではないでしょうか。
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アイデアのつくり方 [ ジェームス・W・ヤング ]
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